英進塾_先生ブログ

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前・後期選抜廃止について


平成18年度に導入された青森県高校入試「前・後期選抜」制が、平成26年度入試をもって廃止される。
平成22年度入試からは、後期選抜も学力試験を課しているので、厳密にはこの制度は3度行われており、
5度目の実施を以って終了となる。
つまり、現在の2年生までは、現行制度での受験となる見通しだ。


代表的な批判としては、前期選抜で不合格だった生徒が、後期選抜でも同じ高校に不合格する、という「2度落ちる」
ケースにおいて、生徒のショックが大きすぎることが東奥日報などではよく取り上げられている。
私も何人かそういう目に遭ってしまった生徒を見てきたが、辛くて見ていられないほど落ち込むものである。


また、前・後期選抜の問題点はそれだけではなかった。


直近の入試は、後期選抜がたいへん「うまくいった」印象を、学校・塾関係者は受けたはずだ。
後期選抜を受けた生徒が、マイルドに公立高校に「着陸」できた印象である。


しかしこれは、後期選抜自体が制度的に優れていると言うよりも、私達学校・塾関係者が、制度に「慣れた」結果ではないか。
後期選抜へ臨む「戦略」が決まってきたのだ。




「青森高校は後期選抜の倍率が下がることはあっても上がることはないので、よほどでなれば下げない」

「下げるときは、倍率に左右されないよう思い切って『南→中央』など2ランク以上下げる」

「公立高校に点数が届かない生徒は、募集人員が数名しかない工業高校を受験。倍率が上がるのを嫌って受験者が少ない傾向にあるため」




など、合格させるための具体的方策が、経験として蓄積されてきた結果が、制度への慣れ、で言わんとするところである。


しかしこれら戦略は、「合格したい高校を」、「努力した結果である学力を以って」受験する、という入試の基本理念に悖る。
所詮は小手先だ。受験機会が生徒に開かれ、学力という公平な基準によって選抜されるであろう今回の「前・後期選抜」廃止は、私も歓迎する。同時に、スポーツや課外活動で本領を発揮する生徒には、推薦の復活やAO入試の復活が望ましい。現在の「特色化選抜」よりも、
オープンに行われるだけあとくされがない。


以下は、その理由を示した、2010年に書いた「特色化選抜批判」である。


========================再掲載========================



青森県の高校入試制度は、長らく続いたかつての「推薦→学科試験」から、平成18年度入試から「前期選抜(5教科試験+内申+面接の総合得点)→後期選抜(面接と小論文等)」へと大改造が施された。それが今年(平成22年度)にまた、「前期選抜(前年度の入試体制に加え、「特色化選抜」を導入)→後期選抜(3教科(国・数・英)の学科試験+面接など、青森高校は小論文も)」というふうにシステムを変えた。


問題は、この「特色化選抜」である。関東などではよく目にする制度であるが、まだまだ馴染みのない制度である。学校側は、前期選抜の募集人員のうち、10〜30%程度を、特色化選抜に振り分けている。といっても、生徒側は、「私、特色化で受けます」という風に別枠での受験を選択できるわけではない。あくまで、学校側の「ふるい」が二通りあるだけなのだ。一つ目の選抜基準は、「5教科試験500点+内申135点」で、学校によっては面接や特別活動の加点が消えている。消えたこれらの代わりをなすものが特色化選抜である。この二つ目の選抜基準は、例えば青森高校であれば、「5教科650点[3教科傾斜配点(国・数・英)]+調査書180点+面接20点」となっている。学力検査の比率を、相対的に低く、調査書(部活や特別活動なども含む)や面接の得点をに相対的に高くしている学校もある。


受験直後の生徒達の反応をご紹介する。生徒達の間の会話の中で、あるいは学校側からのインフォーマルな発表によって、「誰が、何点で受かった、落ちた」という情報は、かなり共有されている。中学生くらいの年齢であると、自分のプライバシーである実得点を人に言うのも、こちらが驚くほど躊躇がない。塾で数十人がいるなかで、大声で自分の得点を発表してしまう生徒もいたほどである。


そんな中、前期選抜に不合格だった生徒が口々にいったことは、「あの子は、自分より○○点も下だったのに、合格している」ということ。この特色化選抜導入の影響で、5教科の点数に関係なく合格する(少なくとも、そう見える)生徒がいるため、合格ボーダーが分かり辛くなっているが、おおよそのボーダーよりも、はなはだしい場合は50点も届かないのに合格している生徒もいるようだ。ギリギリで不合格になった生徒の気持ちを考えてみて頂きたい。本当に悔しいし、割り切れないのだ。


「特色化選抜」は、部活動や生徒会活動に顕著な成果をあげた生徒、傾斜配点で学校が欲する学力の傾向(文系が強い、等)を持つ生徒を、学校側の裁量によって選ぶシステムである。問題は、「誰が、どういう基準で」合格したのかが、我々にはブラックボックスである、ということだ。もちろん、特色化選抜には、点数の基準があるので、まったくの恣意的な裁量だと言うつもりはない。だが、選抜基準として全ての学校が、「2 上記1を基に、調査書の記載内容を考慮しながら、求める生徒像に照らして総合的に判断して選抜する。」と付言している。どのようにしてこの「総合的な判断」がなされたのか、教育委員会による事後のチェックはあろうが、もしそれを行ったうえでのディスクロージャー(個人名はもちろん伏せて)がなければ、実に不透明な選抜方法となってしまう。最悪の場合は、「裏口」的なもの、という邪推を受けてしまうのではないか。


以前のような推薦制度に戻してはどうだろうか。「この生徒は、部活動で腕に覚えがあるので、貴校に推薦したい。如何か。」という宣言とともに、同じ学校の生徒たちの知るところとなるので、少なくとも不透明感はない。その後の前期選抜は、一般選抜のみとなるので、今回のような不公平感もない。
あるいは、秋田県のように、「前期選抜(主に内申、面接、小論文など)→一般入試(主に5教科学科試験)→後期入試(主に面接、小論文)」の3段階。前期で部活や特別活動での合格者を選抜してしまい(特色化や推薦で取る枠)、その後はほぼ学力のみでの競争を一般入試で行う。倍率のミスマッチや、本番での思わぬ失敗ではじかれた生徒の救済策としての後期選抜、という入試制度ではどうか。
いずれにせよ、現場での問題を吸い上げ、より良い入試制度へ向けての改造へ課題は多い。